MIT留学でダニエル一家は何を思ふ
三十路ダニエルがMITで勉強する意味はあるのか/二重国籍者の留学とは何なのか/ハンドボールについて何を思ふのか/アメリカ・日本について何を思ふのか
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ダニエル

Author:ダニエル
ダニエル(夫):MITエンジニアリング修士課程に社費留学中、アメリカ生まれの二重国籍、趣味ハンドボール、レッドソックスにわかファン
サクラ(妻):米国企業の日本法人を辞めて渡米、でもアメリカ苦手、2年間で好きになれるか
ハロルド(長男):ダニエルに外見も中身もうりふたつ、慎重派な3歳児
ジョン(次男):ハロルドの若かりし頃にそっくりの、ボストン生まれのハッピーボーイ

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75パーセントが終わりました「福知山線脱線事故を思ふ(後)」
事故の発生を受けて、さまざまな対策がとられています。多くのATSを設置したり、運行ダイヤを改善したり、速度計の精度を向上させたり。

しかし、これらはあくまで場当たり的な対策です。(安全研究所の新設を除きます。)

一番重要な点は、「会社全体が危険を危険として認識できるようになる」ことだと思います。

今回の事例でいえば、あのカーブが危険であるということを認識できていれば、この事故は防げていたかもしれません。

学術的には、このような大惨事をもたらす可能性のある状況・危険のことを「ハザード」と呼んでいます。

そして、アメリカでは、このハザードを発見し、排除する、または制御することをハザード・アナリシスと呼び、多くの手法が開発されています。また、ハザードアナリシスを通してシステムの安全性を確保する手法を「システム・セイフティ」と呼び、アメリカのさまざまな業界で実施されています。

システム・セイフティは信頼性工学とは違います。信頼性工学は、個々のパーツの信頼性を向上させることで、システム全体の信頼性を向上させる手法です。

システム・セイフティは安全工学とは違います。安全工学は、主に労働者の安全を確保するための手法です。

JRに必要なものは、このシステム・セイフティにあるのではないでしょうか。安全対策部や建設工事部がシステム・セイフティの概念を理解し、ハザードをハザードとして認識できること、これが重要だと思います。

このシステム・セイフティについては、私がMITで勉強したことのひとつです。こちらでは、"System Safety"という授業さえあります。

しかし、インターネットで検索したところ、日本ではこのシステム・セイフティの考え方は浸透していないようです。

それは、あまりに当たり前だからでしょうか。でも、その当たり前のことが、この会社には一番重要であると考えています。
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75パーセントが終わりました「福知山線脱線事故を思ふ(中)」
事故報告書を読み進めるうちに、どうしても、ひとつの疑問が生じます。

「なぜJRは自動列車制御装置ATSを事故のカーブに設置することができなかったか。」

この疑問に答えることが、事故の再発を防止するために一番重要であると考えています。

事故の発生したカーブには、ATS-SWが設置されていましたが、カーブでの速度チェック機能が備えられていませんでした。

カーブでの速度チェック機能を付加することは、決して難しいことではなかったようです。2003年には、会社内の17箇所のカーブに速度チェック機能が付加されています。しかし、この際の基準は「最高速度が130km/h区間の半径600メートルのカーブ」として限定されたため、事故が発生したカーブに速度チェック機能は付加されませんでした。(事故が発生したカーブは最高速度120km/h区間にあります。)

なぜ、「最高速度が130km/h区間の半径600メートルのカーブ」に限定されたのでしょうか。

関係者のひとりが証言しています。「最高速度120km/hの運転は昔からしてきており、危険として認識していなかった。」

ひとつ、驚いたことがあります。

運転士のブレーキ使用開始の遅れ時間が、たった16秒であったということです。

16秒間程度集中が途切れることは、よくあることではないでしょうか。どうしようもない眠気に襲われることもおおいに考えられます。運転士が意識を失うことも、可能性としては捨て切れません。

すなわち、このカーブは、直前に16秒間だけ意識を失うことでこのような惨事が必ず発生する構造になっていたのです。

しかし、会社側はこの危険性を認識できなかった。120km/h運転は安全だというメンタルモデルに固執してしまった。

残念なのは、比較的最近の1991年に最高速度が110km/hから120km/hに引き上げられ、また、1996年にカーブの半径が600メートルから304メートルに縮小されていることです。これらの設計変更がトリガーとなって、カーブでの速度チェック機能を付加することも十分にできたはずです。でも、できなかった。危険と思わなかった。カーブでの速度チェック機能なんて、昔からある技術のようですし、そして高価な改造であるということでもないようです。

お粗末なのは、会社の安全投資の予算は、決して少ないわけではないことです。急に減らされたということもありません。

安全に投資する予算が急にカットされ、その結果、安全投資が不十分であった、というのはよくある構図です。スペースシャトルの事故などは、その典型のようです。

安全に投資する予算はあったのだけれど、その使い道が間違っていた、というのが正しいところなのでしょうか。(他にどのような設備に安全投資していたのかを調べていませんので、はっきりしたところは分かりません。)

もう一つお粗末だったのは、現場の人間も危険性を認識できていなかったということです。事故後のアンケート結果がそのことを物語っています。

現場の人間は危険性を認識していたけれども、上の人間が聴く耳を持たなかった、というシャトル事故の構図は、今回も当てはまりません。

会社内の誰も危険として認識できていなかった。さらにお粗末ではないでしょうか。
75パーセントが終わりました「福知山線脱線事故を思ふ(前)」
福知山線脱線事故の発生から2年半が経ちました。

大規模複雑システムのセイフティを勉強している私としては、この事故から多くのことを学ぶ必要性を感じています。

昨秋の "Human Factors Engineering"という授業では、各人が関心のある事故を取り上げて、スイスチーズモデルに基づいた 'Human Factors Analysis and Classification System (HFACS)"というモデルを適用するという課題があったのですが、迷わずにこの事故を選びました。

昨春の"System Dynamics"という授業では、各人が興味のあるテーマについてシステム・ダイナミクスモデルを構築してシミュレーションを実施するという課題があったのですが、やはりこの事故をテーマに選びました。システム・ダイナミクスの手法を用いてセイフティをモデル化することについては、私の指導教官のナンシー・レベソン教授が提唱しています。

セイフティについて議論する場として私の指導教官が主宰している「コロンビア・ミーティング」に参加させてもらっていますが、今秋、この事故について私が説明し、議論をする場を設けさせてもらいました。MITの教授3人、ボストン大学ロースクールの教授1人を含むメンバー皆、この事故に関心を寄せていました。

このブログの趣旨からは大きくそれてしまいますが、福知山線脱線事故について私が今考えていることについて、ここにポストしておきたいと思います。

まず、航空鉄道事故調査委員会がまとめた事故調査報告書について思ふところがあります。

私はこの報告書を支持します。

この報告書については賛否両論あるようですが、これで十分であり、そして、これが限界だと思います。よく調べられ、そして、よくまとめられていると思います。

最後の建議などについては少々意見が偏っている(運転士に関する事柄が多すぎる)ようにも感じますが、この報告書の本文を読み、自分の頭でよく考えれば、多くのことが学べると思います。

何より、JRの体質を痛烈に批判しています。さらには、国(国土交通省)についてまで言及しています。この類の報告書としては、珍しいことではないでしょうか。このような事故を取り巻くコンテクストを理解することなしに、この事故を理解することはできません。

そして、関係者のメンタルモデルが、インタビューにより、もしくはアンケート結果により詳細に言及されています。メンタルモデル、運転士やエンジニアなどの関係者がどのように考えていたかを知ることは、事故を解析するうえでの必要な情報だと思います。

コロンビア・ミーティングで私の発表を聞いたナンシー・レベソン教授も、「きちんとした報告書なのね」、という感想を漏らしていました。

こちらに来てから授業の一環として、または研究の一環として、数多くの事故報告書を読んできました。この報告書は、その中でも優れている部類に入ると思います。


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